幻想的な光を放つ虫 - ゲンジボタルとヘイケボタル(その1)
幻想的な光を放ちながら夜空を舞う、夏の風物詩「ホタル」。
日本には、約50種類ほどのホタルが生息しています。
ホタルといえば、「発光」が大きな特徴ですが、
すべてのホタルが発光するわけではなく、発光するのは10数種類程度とのことです。
今回は、この中でも代表的な種である
についてご紹介します。
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まず、ゲンジボタルについて。
ゲンジボタルは、日本にしか生息していない、日本固有種です。
日本で見られる最も大きいホタルの種で、
体長はオスは15mm、メスは20mm程度です。
発光についても、ホタルの中で最も強い光を放ち、数秒間隔で明滅します。
幼虫はイモムシのような外見ですが、
尾の部分を成虫同様に発光させることができます。
幼虫は川の中で過ごし、清流の流れのゆるい所でカワニナを捕食して成長します。
「ホタルは川の綺麗なところでないと生きられない」と言いますが、
それは餌のカワニナが清流でないと生息できないためです。
幼虫の時に栄養を蓄え、成虫になります。
成虫は幼虫の時の栄養を使って過ごし、水分を摂取するのみで断食モードになります。
成虫の活動時期は6月上旬〜6月下旬で、2週間程度しか活動できません。
ゲンジボタルは先述の通り、綺麗な川でしか生きられない為、
町ぐるみで保護されている場所も多くあります。
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次に、ヘイケボタルについてです。
ヘイケボタルは日本だけでなく、東シベリアから朝鮮半島まで分布する種です。
体長はオスが10mm、メスが12mm程度です。
また、発光はあまり強くなく、発光時間は1秒程度で明滅します。
ヘイケボタルは水田、湿原といった止水域に生息します。
幼虫の餌になるのは、モノアラガイなどです。
活動時期は7月頃〜8月頃で、オスは7日間、メスは10日間程度活動します。
ゲンジボタルのように、短い期間に集中的に発生するのではなく、
発生の密度は高くなりません。
水田への農薬散布や水田周辺の環境変化によって、数が激減しています。
ゲンジボタルと異なり、ヘイケボタルの保護活動はほとんどないようです。
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以上、2種のホタルですが、
「ゲンジ」と「ヘイケ」という名前の由来が気になりませんか?
かつて、ゲンジボタルはオオボタル、ヤマボタル。
ヘイケボタルはコメボタルと呼ばれていたそうです。
そこから今の名前がついた由来は諸説あるようなのですが、
ゲンジボタルの名の由来は、
①優雅な光を放つ様が、源氏物語の主人公「光源氏」になぞらえたという説
②平家打倒の夢破れ、無念の最期を遂げた源頼政の想いが蛍にたとえられ、
源頼政が亡霊になり蛍となって戦うと言う伝説にも由来しているという説
があるようです。
ヘイケボタルの名の由来は、
もともと名付けられていたゲンジボタルと対比し、
源平合戦にちなんで、小型である方=敗北した方という意味で
「ヘイケボタル」と名づけられた。
との説があります。
では、特徴的なホタルの「発光」の能力について・・・
といきたいところですが、
ちょっと長くなってしまうので、
そちらについては次回の記事でご紹介したいと思います。
自然観察指導員になりました
先週、研修合宿に参加し、自然観察指導員となりました。
自然観察指導員とは、日本自然保護協会が認めるボランティアリーダーのことです。
自然観察指導員は、資格といった類のものではなく、
自然観察会などを通じて自然を愛する人を増やしていく役割を担っています。
特別な資格は必要なく自然に関する活動意欲がある人なら誰でも活躍できます。
私は、自身の活動を通じて、
「自分自身を含む地域に暮らす人が自然をもっと楽しめる社会を作りたい」
と思っています。
その為に、以下を課題として活動していくつもりです。
①自然を好きになってくれる人を増やす
②自然により親しむ方法を伝えていく
上記の活動をしていくにあたって、
自然保護協会の存在と自然観察指導員としての活動が
大きな助けになると考えた為参加させていただきました。
①については、
観察会などを通じて、自然の面白さ・楽しさをお伝えしていきたいと思っています。
私のITエンジニアとしてのキャリアを活かして何かできないかと模索中です。
なお、このブログもその一環です。
もともと自然が好きな方には、もっと好きになってもらう。
虫が苦手な方には、虫の面白いところ・素晴らしさを伝えてむしろ好きになってもらう。
自然に無関心な方に、まずは興味をもってもらい、最終的に好きになってもらう。
こんな活動をしていきたいですね。
②については、
現社会において、自然に対する関わり方に課題や改善点があると思っており、
より良くする方法を考えていきたいし、より良い関わり方を伝えていきたいと考える点です。
自分が思う改善点の1例として、
「幼少期の自然への関わり方の教育」があります。
例えば、子供はとかく虫を捕まえることに夢中になることがあります。
虫を見つけたら捕まえて虫かごに入れる。見つけた虫の数で競争することもあります。
かくいう自分も、子供の頃は1日中公園を走り回って、
虫かごいっぱいにカナブンやバッタを捕まえていたものです。
この場合、虫との関わりよりも「捕まえること自体」が目的になっている場合があります。
ですが、動物と親しむ手段として考えた時に、
そのような大量の捕獲は必要なのか?
ということがあります。
捕獲しなくても観察することは可能です。
むしろ捕まえずにじっと見て観察することで得られるメリットもあります。
捕食や産卵のタイミングなど、動物がありのままの姿を見せ、
貴重なシチュエーションを見ることができるチャンスであったりします。
もちろん直に触れることも重要な体験であることは理解しています。
普段見られない姿が見られたり、五感で動物を感じることができますので。
(極端な捕獲反対論を掲げるつもりはありません)
かつて北アメリカに約50億羽いたと言われる、
リョコウバトはヒトによる乱獲で絶滅しました。
また、アメリカバイソンはかつて6000万頭いたと言われますが、
狩猟や乱獲によって一時的に1000頭未満まで激減しました。
ヒトの手が介入することによって、野生動物が大きな影響を受けた歴史が数多くあります。
今、虫や動物が苦手な大人が増え、自然との関わりを正しく教育できる人は少なくなってきていると考えています。
そういった大人たちを導いたり協力体制を築いていくのも自然観察指導員の役割かと思っています。
できるだけ生態系にインパクトを与えず自然に親しむ方法を大人達が知り、
次世代に伝えて教育していくことで、
今見られる動物達を今後も見られるようにしていきたいですね。
長くなりましたが、今後色々と活動していこうと考えていますので、
このブログでも活動報告していきたいと思います。
よろしくお願いします!
カエルが鳴くと雨が降る? - ニホンアマガエル
今年もついに梅雨入りしました。
ということで、今回はニホンアマガエルについて紹介したいと思います。
ニホンアマガエルは日本で最も数の多い種で、日本で一番ポピュラーなカエルです。
大きさは3~4cmぐらいで、メスの方がオスより大きいです。
肉食で、主に小さな昆虫類やクモ類を食べます。
動いているものを食べる性質があるので、死んだものや動かないものは食べません。
皮膚からは、刺激性の毒液を分泌します。
手で触っても問題ないですが、毒液がついた手で傷口を触ると激しい痛みを感じます。
毒液が目に入った場合は失明することもあるので注意が必要です。
前足に四本、後ろ足に五本の指があり、指先には吸盤があります。
しかし、みずかきはほとんどありません。
カエルといえば水の近くで生活するイメージがありますが、
本種は卵を産むとき以外は水に入らず、主に樹上で生活します。
本種は日本で最も多いカエルだとご紹介しましたが、
そうである理由が主に2つあります。
1つめは、比較的乾燥に強いことです。
近くに森がないところでアマガエルを見かけたことはありませんか?
上記のように乾燥に強いことから、生活場所の選択肢が広がります。
森や林に限定されることなく、ある程度湿度があるところであれば街中でも生活できるのです。
2つめは、発達した吸盤を持つことです。
森や林の中では垂直に木をよじ登る為に使われると思いますが、
この吸盤は生活場所が街に移っても活躍します。
例えばU字溝やコンクリート水路に落ちた場合、他のカエルは脱出することができなくなってしまいますが、
本種の場合は吸盤を使ってよじ登って逃げ出すことができます。
またニホンアマガエルの能力として、
自分の体色を環境の色に合わせて変化させることができます。
↓のように土の上では灰色っぽく、草の上では濃緑に体色変化します。
カエルは農業を営んでいた日本人にとって馴染み深い動物です。
アマガエルが鳴くと雨が降るといわれ、農作業の目安にされていました。
なぜ雨が降るのがわかるのかというと、
アマガエルは皮膚が薄く、湿気や気圧の変化に敏感なため、
天候の変化に反応して鳴くのだそうです。
この時の鳴き声は「雨鳴き」「レインコール」などと呼ばれています。
「雨蛙」の名に違わない能力ですね。
なお、カエルたちが鳴くのは空が暗くなってからです。
明るい時に鳴くと、天敵の鳥などに見つかりやすい為です。
また、カエルは俳句でも活躍する動物です。
芭蕉の「古池や蛙飛び込む水の音」は有名ですね。
「蛙」は春の季語で、「雨蛙」は夏の季語になります。
以上、梅雨の季節に活躍する、ニホンアマガエルの紹介でした。
精霊の宿る木 - ガジュマル
今日は、沖縄で出会った生物として、
沖縄に自生する植物、ガジュマルについて紹介したいと思います。
↑は実際に沖縄に行って撮った写真です!
ガジュマルは、熱帯地方に分布するクワ科の常緑高木です。
ガジュマルの大きな特徴として、「気根」があります。
気根は、マングローブに生息する植物によく見られるもので、
満潮で冠水した時など、根を空気中に出すことで、
呼吸できるようにしたり、空気中の水分を出し入れします。
また、空気中の栄養分(窒素など)を取り入れる働きもします。
ガジュマルの場合、いくつもの気根を枝から出し、
地面に突き刺して支柱にします。
無数の気根が突き刺さっている姿は力強く、神秘的です。
この気根は非常に強いパワーがあり、
アンコールワットの寺院では、ガジュマルの気根が侵食して建物を覆い、
一体化している様子が見られます。
そんな力強い姿からか、ガジュマルの花言葉は「健康」です。
ちなみに、ガジュマルには「絞め殺しの木」という別名もあります。
ガジュマルは他の木を宿主とし、寄生します。
寄生した木の幹に絡みつきがら成長していきます。
ですが、最終的には宿主を締め付けて枯らしてしまうのです。。
また、ガジュマルは古くから「聖木」「多幸の木」として神聖視されてきました。
沖縄では、「キジムナー」という精霊が宿ると言われています。
キジムナーは沖縄版の座敷童といったところで、
キジムナーに気に入られた家は繁盛すると言われています。
また、風水的にもガジュマルは金運や勝利運、結婚運を上げる効果があるとされているようです。
国外においても、ガジュマルの一種であるインドボダイジュは、
寺院などにも好んで植えられています。
以上、沖縄で出会った生物の紹介ひとまずここで最終回としたいと思います。
ではまた次回まで。
陸上最大の甲殻類 - ヤシガニ
今回は沖縄に生息する、陸上最大の甲殻類「ヤシガニ」について紹介します。
ヤシガニは「カニ」という名前がついていますが、
ヤドカリの仲間です。(オカヤドカリ科)
その大きさはというと、大きいものでは40cmを超え、
体重も4kg以上となります。
寿命も長く、大きくなるまでに10-15年ほどかかり、
なんと50年程度も生きると言われています。
ヤドカリなので海を主な生活の場としていると思いきや、
岩場や樹林といった、陸上で生活しています。
むしろ、泳ぐことができないため、水の中では溺れます。(!)
さて、名前の由来についてですが、
やはり「ヤシ」が関連しているようです。
ヤシガニは木を登ることができ、ヤシの実を食べることがあるのですが、
「ヤシの実を食べるカニ」というよりは、
「ヤシの実を切り裂くことができるカニ」というニュアンスのようです。
上記の通り、ヤシガニは、そのハサミが非常に強力なのです。
針金や釘なども簡単に真っ二つにしてしまうそうです。
人間の指も簡単に切断されてしまう為、近づくときは細心の注意が必要です。
また、力も非常に強力で30kg程度の物を持ち上げることができます。
また食性についても特徴がある動物です。
前述のように、ヤシの実も食べますが、食性は「雑食性」です。
食べられる物は何でも口にし、木の実から亀の卵、動物の死骸も食べます。
ちょっと怖い話ですが、自殺を図り樹林に入った人間の亡骸に群がるようなこともあるようです。
また、銀食器や鍋などきらきらとした物を持ち去ることから、「オイハギガニ」の別名も持ちます。
英語でも「Robber Crab (泥棒蟹)」といった名前がつけられています。
人との関わりとしては、
旅行者用の高級食材として扱われています。
尾に詰まっている、濃厚な味噌が非常に美味しいとのことです。
ただ、何でも食べることから、そのヤシガニが普段食べているものによって、
毒が蓄積されていることがあり、調理には注意が必要なようです。
ヤシガニは絶滅危惧種に指定されており、捕獲が禁止されています。
以上、ヤシガニの紹介でした。
最強の硬さを持つ虫 - クロカタゾウムシ
沖縄で出会った生物第二弾です。
今回は、最強の硬さを持つ虫についてご紹介します。
その名も「クロカタゾウムシ」です。
八重山諸島のみに生息する虫で、ヒョウタン型の体をしています。
色が黒くてツヤがあるので鉄アレイみたいです。
名前の由来は、「黒くて硬いゾウムシ」とまんまのネーミングです。
ちなみに「ゾウムシ」の名前は、口吻が長く伸びた状態が象の鼻に似ていることが由来です。
では、どのくらい硬いのか?
ステンレス製の標本の針が貫通しないくらい硬いそうです。
コンパスの針でやっと貫通するくらい。
また、普通鳥は昆虫の大天敵なのですが、
硬すぎて食べても消化できない為、鳥も本種を食べないとのことです。
そして体を硬くすることに特化させすぎた挙句、
本種は空を飛ぶことができません。
代わりに陸上では他のゾウムシよりも機敏に動き回ります。
このように、とにかく体が硬いのですが、
なぜこんなに体が硬いのかというと、
大抵の虫は2層か4層の表皮を重ね合わせています。
ですが本種はなんと7層で、しかも複雑に分厚く重なり合っているのです。
この構造を人間に技術に応用することも考えられているようです。
なお、このクロカタゾウムシは、
人気漫画「テラフォーマーズ」でも登場した種です。
作品中では、最も硬い昆虫として紹介され、
その能力を持つ的に主人公たちが大苦戦しました。
機会があればぜひこのクロカタゾウムシの活躍をご覧になってください!
ダイバー憧れの巨大生物 - オニイトマキエイ(マンタ)
前回の記事に書いた通り、沖縄に行ってまいりました!
そして見てきました、マンタを!
かつてマンタは1種であるとされていましたが、現在ではマンタは2種になっています。
それはオニイトマキエイとナンヨウマンタです。
この2種は、生息地やサイズの違い、斑紋の違いなどで分けられます。
写真のマンタは石垣島で見たもので、こちらは「ナンヨウマンタ」です。
サイズは少し小さい種になります。
オニイトマキエイは、体長最大8m、体重はなんと3tにもなるそうです。
食事の仕方も迫力があります。
頭のヒレで海底の砂を掘り起こし、プランクトンを水中に追い立て、
大きい口を開けて海水と一緒にプランクトンを食べます。
食事中の姿です↓
また、マンタはジャンプするのを知っていますでしょうか?
マンタはトビエイ目トビエイ科です。
名前に違わず、なんと3m以上もの高さをジャンプするのです。
水中でも大迫力でしたが、この巨体が空を飛ぶのは圧巻ですね。
エネルギーも相当量使うと思われます。
ジャンプする理由は諸説ありますが、
・体についた寄生虫を落とす為
・メスにアピールする為(ジャンプするのはオスだけ)
などと言われています。
マンタはかつて、ツノのような頭鰭、巨大なコウモリのような体形から、
「デビル・フィッシュ」という名で怪物扱いされ恐れられました。
その後1970年代、
ダイバー達がマンタは温厚な生物ということに気づき、
今日では「ダイバーの憧れ」とされる存在になっています。
以上、マンタのお話でした。