砂漠の船 - ラクダ
今回は「砂漠の船」と呼ばれる動物、ラクダについて紹介したいと思います。
インド西部、西アジア、北アフリカ、オーストラリアと広く分布し、
全世界で1400万頭生息しているラクダのうち、90%がヒトコブラクダと言われています。(2010年時点)
ラクダ、といえば「コブ」が特徴の動物ですが、
これがどんな役割を果たしているか知っていますか?
みなさんご存知の通り、ラクダは主に砂漠など乾燥地帯に生息する動物ですが、
この砂漠生活に特化した、驚くべき能力をご紹介したいと思います。
ラクダのコブは大きく2つの役割を持っていると言われています。
1つ目の役割は栄養の貯蓄です。
砂漠は生物が生活しにくく、餌が少ない環境です。
ラクダはそれにコブという形で適応しました。
コブは主に脂肪からなり、食事が出来ない時はこの脂肪を栄養分として使うことができます。
その為、ラクダの栄養状態が良い時はコブが大きくなりますが、食べ物を食べない時間が長くなると段々と小さくなっていくのです!
2つ目は断熱材としての役割です。
砂漠は非常に強い陽が照りつける場所です。
汗をかかないラクダにとって、そのままでは体温が上昇し続けてしまいます。
そこで、背中に脂肪をコブとして背中1箇所に集中させました。
そうすることで日光による熱をコブで受け止めて遮るようにしたのです!
他にもラクダは砂漠生活に適応した能力をいくつも持っています。
・二列になった長いまつげ&鼻の穴も自由に閉じることができる
→砂漠に舞う砂やホコリを防ぐ
・長い体毛
→照りつける日光や夜の寒さを防ぐ
・ひざや胸に「たこ」がある
→固い地面に座るのに適している
・足の裏に角質化したこぶがある
→温度の上がった砂地を歩くのに適している(夏の海の熱い砂浜を歩いたことはありませんか?)
・赤血球が細長い形をしている
→体の水分が少なくなった時にも血管がつまりにくい形
・1回に60〜100リットルもの水を飲むことができる
→体に水分を蓄えることができる
・体温を34度〜42度まで変化させることができる
→外気温が高い時は体温を上げて水分の減少を防ぎ、低い時はエネルギー消費を抑える
と、このように様々な機能を持っています。
まさに砂漠生活に特化した動物なのです。
人との関わりといったところでは、特に乾燥地域での乗用利用です。
ラクダは、砂漠の隊商「キャラバン」の主役として数世紀に渡って利用されてきました。
最大300kgもの荷物を背負って移動できるそうです。
ところで、ラクダに乗ることに慣れていない人はしばしば「ラクダ酔い」するそうです。
これにはラクダの歩き方「側対歩」というものが関係しています。
側対歩とは、右前肢と右後肢、左前肢と左後肢がペアになって離陸、着地する歩き方です。
これに対して、私たち人間の歩き方は「斜対歩」と呼ばれます。
側対歩では左右のぶれが大きくなります。(これがラクダ酔いの原因です)
歩幅も稼げないのでスピードが出ませんが、その代わりにからだのひねりを使うことがなく、非常にエネルギー効率が良いのです。
ゾウ、キリンなど比較的大型動物がこの歩き方をすることが多いようです。
余談ですが、以上から江戸時代の日本人の「なんば歩き」は省エネな歩き方だと考えられます。
最後に、ラクダのミルクは牛乳よりもヘルシーで、高級なミルクとして販売されているようです。
牛に乳よりもしょっぱい感じらしいですが、チャンスがあれば試飲してみたらいかがでしょうか?