食物連鎖の頂点に立つ三日月 - ツキノワグマ
今回は、ニュースでも取り沙汰されている、ツキノワグマについてご紹介します。
クマは日本で2種のみ生息しており、ツキノワグマは、本州/四国に生息しています。
かつては九州にも生息していましたが、
2012年に九州のツキノワグマは絶滅と認定されてしまいました。
ちなみにもう一種はエゾヒグマで、北海道に生息しています。
ツキノワグマは全身が黒い毛で覆われ、胸に白い三日月(V字)の模様があります。
ご存知かと思いますが、この三日月が名前の由来となっています。
大きさは、平均的な個体で110~130センチ程度、
体重はオスが80キロ程度、メスが50キロ程度です。
世界のクマ類と比べると、小型~中型の種になります。
ツキノワグマの身体能力についてですが、
ツキノワグマは視力が弱く、聴力と嗅覚が優れています。
特に嗅覚は犬並みに良いと言われています。
運動能力は高く、なんと時速50km以上で走ることができます。
また大きな体を持ちますが、泳ぎや木登りも得意です。
さらに前足は筋力が発達していて、爪も鋭く固く、強力な武器になります。
人身被害の多くはこの爪による裂傷のようです。
食性について、
クマというと川で鮭を取っているようなイメージがありますが、
これはヒグマの方です。
ツキノワグマは雑食性ですが、主に山菜や木の実などの植物が中心です。
あとは蛋白源としてアリやハチの巣を探して食べたりします。
プーさんのイメージですね。
さらに動物の死骸も好んで食べます。
なので、クマに出会った時の「死んだふり」はむしろ逆効果で、
迷信であることになりますね。
ちなみにツキノワグマはあまり縄張り意識を持っておらず、
餌を求めて広範囲に移動をする傾向があります。
餌を基準に移動する為、餌が不足している時は行動範囲を広げます。
この習性の為、山に餌が不足している時は、民家に出没したりします。
さらに雑食性で人間の出すゴミも食べることも、
人里への出没する原因になっているようです。
ちなみにクマは冬眠すると言いますが、
実際には仮死状態になるわけではなく、
じっとしているだけなので「冬ごもり」という言い方が正しいようです。
さて、タイトルにあるように、クマは食物連鎖の頂点に立つ動物です。
上記だけでも、生態系に大きな影響を持つ動物ですが、
さらに生態系に影響を与えていることがあります。
ツキノワグマは、クマ棚という木の上に腰かけのようなものを作ります。
彼らは、冬に備えて大量の果実を食べますが、
その際ドングリなどの木に登り、木の実や果実のついた枝を折ってたぐり寄せ、
食べ終わった枝を自分のおしりの下に敷くという行動を繰り返します。
その結果、集まった枝が座布団のように棚状になるのです。
クマ棚ができると、その場所に枝葉のない空間ができ、
そこから光が林の中に差し込みます。
このクマ棚の隙間の光を受けて、多様な植物が育ちます。
植物が育って花が咲き、そこに虫が集まり、さらに鳥が集まり・・・
と、クマ棚をきっかけに生物多様性の連鎖が発生するのです。
このように、クマは森林の生態系に大きく貢献しているのです。
里山の方では、人とクマとの距離感が変わってきているようですが、
クマは自然が豊かであることの象徴でもあります。
今後もクマとのバランスを取ってうまく共生していきたいですね。