幻想的な光を放つ虫 - ゲンジボタルとヘイケボタル(その2)
幻想的な光を放つ虫 - ゲンジボタルとヘイケボタル(その1) - 動物ずかん 〜ちょっと面白い動物の知識〜
↑前回の記事に引き続き、ホタルについてご紹介したいと思います!
前回は、ゲンジボタルとヘイケボタルの関係についてご紹介させていただきました。
今回は、驚くべきホタルの「発光能力」についてご紹介します。
ホタルの発光の仕組みは、とても注目されている能力です。
その理由は、地上で最も効率が良いとされている発光の仕組みだからです。
つまり、とっても省エネなのです。
白熱灯=約10%
蛍光灯=約20%
LED=約30%
に対し、ホタルの光はなんと88%と言われています。
無駄な熱を出さないことから、「冷光」と呼ばれます。
(最近の研究では41%とも言われますが、それでも地上最高効率です)
ホタルの発光物質はルシフェリンと呼ばれ、
ルシフェラーゼという酵素とATPがはたらくことで発光します。
人間がこの発光メカニズムを応用としましたが、一つの壁がありました。
発光体ルシフェリンとATPは化学合成で大量生産できるのですが、
酵素であるルシフェラーゼはホタルからしか獲れなかったのです。
1グラムのルシフェラーゼを抽出するのに、10万匹のホタルが必要とのことでした。
しかし、今では技術の進歩によってルシフェラーゼを増殖させることができるようです。
このようにホタルの発光メカニズムをご紹介して来ましたが、
この発光メカニズムの実用化として、食品衛生検査への応用があります。
食品の衛生検査では、
・汚染微生物=食品の腐敗に関与
・汚れ=微生物の温床となる
を検査しますが、
これらにはATPが含まれており、ルシフェラーゼで検査することができます。
この検出方法は、簡単で正確なので、食品産業や医療分野などで利用されています。
照明の省エネルギー化などについての実用化はまだ先のようです。
なお、ホタルの発光は成虫の姿でのイメージが強いですが、幼虫も発光することができます。
幼虫は、腹部末端付近の体節に発光器を持つものが多いです。
最後にホタルは、日本人に古くから馴染みのある虫です。
奈良時代の720年の日本書紀に初めて文字として著されています。
平安時代でも「万葉集」や「源氏物語」で、蛍の文字が出てきます。
「枕草子」では、
「夏は夜。月のころはさらなり、蛍の多くとびちがいたる」
と記されており、
ホタルは夏の風物詩であったことがわかります。
このように、ホタルは古来から日本人の心を癒してきたんですね。