陸上最大の甲殻類 - ヤシガニ
今回は沖縄に生息する、陸上最大の甲殻類「ヤシガニ」について紹介します。
ヤシガニは「カニ」という名前がついていますが、
ヤドカリの仲間です。(オカヤドカリ科)
その大きさはというと、大きいものでは40cmを超え、
体重も4kg以上となります。
寿命も長く、大きくなるまでに10-15年ほどかかり、
なんと50年程度も生きると言われています。
ヤドカリなので海を主な生活の場としていると思いきや、
岩場や樹林といった、陸上で生活しています。
むしろ、泳ぐことができないため、水の中では溺れます。(!)
さて、名前の由来についてですが、
やはり「ヤシ」が関連しているようです。
ヤシガニは木を登ることができ、ヤシの実を食べることがあるのですが、
「ヤシの実を食べるカニ」というよりは、
「ヤシの実を切り裂くことができるカニ」というニュアンスのようです。
上記の通り、ヤシガニは、そのハサミが非常に強力なのです。
針金や釘なども簡単に真っ二つにしてしまうそうです。
人間の指も簡単に切断されてしまう為、近づくときは細心の注意が必要です。
また、力も非常に強力で30kg程度の物を持ち上げることができます。
また食性についても特徴がある動物です。
前述のように、ヤシの実も食べますが、食性は「雑食性」です。
食べられる物は何でも口にし、木の実から亀の卵、動物の死骸も食べます。
ちょっと怖い話ですが、自殺を図り樹林に入った人間の亡骸に群がるようなこともあるようです。
また、銀食器や鍋などきらきらとした物を持ち去ることから、「オイハギガニ」の別名も持ちます。
英語でも「Robber Crab (泥棒蟹)」といった名前がつけられています。
人との関わりとしては、
旅行者用の高級食材として扱われています。
尾に詰まっている、濃厚な味噌が非常に美味しいとのことです。
ただ、何でも食べることから、そのヤシガニが普段食べているものによって、
毒が蓄積されていることがあり、調理には注意が必要なようです。
ヤシガニは絶滅危惧種に指定されており、捕獲が禁止されています。
以上、ヤシガニの紹介でした。
最強の硬さを持つ虫 - クロカタゾウムシ
沖縄で出会った生物第二弾です。
今回は、最強の硬さを持つ虫についてご紹介します。
その名も「クロカタゾウムシ」です。
八重山諸島のみに生息する虫で、ヒョウタン型の体をしています。
色が黒くてツヤがあるので鉄アレイみたいです。
名前の由来は、「黒くて硬いゾウムシ」とまんまのネーミングです。
ちなみに「ゾウムシ」の名前は、口吻が長く伸びた状態が象の鼻に似ていることが由来です。
では、どのくらい硬いのか?
ステンレス製の標本の針が貫通しないくらい硬いそうです。
コンパスの針でやっと貫通するくらい。
また、普通鳥は昆虫の大天敵なのですが、
硬すぎて食べても消化できない為、鳥も本種を食べないとのことです。
そして体を硬くすることに特化させすぎた挙句、
本種は空を飛ぶことができません。
代わりに陸上では他のゾウムシよりも機敏に動き回ります。
このように、とにかく体が硬いのですが、
なぜこんなに体が硬いのかというと、
大抵の虫は2層か4層の表皮を重ね合わせています。
ですが本種はなんと7層で、しかも複雑に分厚く重なり合っているのです。
この構造を人間に技術に応用することも考えられているようです。
なお、このクロカタゾウムシは、
人気漫画「テラフォーマーズ」でも登場した種です。
作品中では、最も硬い昆虫として紹介され、
その能力を持つ的に主人公たちが大苦戦しました。
機会があればぜひこのクロカタゾウムシの活躍をご覧になってください!
ダイバー憧れの巨大生物 - オニイトマキエイ(マンタ)
前回の記事に書いた通り、沖縄に行ってまいりました!
そして見てきました、マンタを!
かつてマンタは1種であるとされていましたが、現在ではマンタは2種になっています。
それはオニイトマキエイとナンヨウマンタです。
この2種は、生息地やサイズの違い、斑紋の違いなどで分けられます。
写真のマンタは石垣島で見たもので、こちらは「ナンヨウマンタ」です。
サイズは少し小さい種になります。
オニイトマキエイは、体長最大8m、体重はなんと3tにもなるそうです。
食事の仕方も迫力があります。
頭のヒレで海底の砂を掘り起こし、プランクトンを水中に追い立て、
大きい口を開けて海水と一緒にプランクトンを食べます。
食事中の姿です↓
また、マンタはジャンプするのを知っていますでしょうか?
マンタはトビエイ目トビエイ科です。
名前に違わず、なんと3m以上もの高さをジャンプするのです。
水中でも大迫力でしたが、この巨体が空を飛ぶのは圧巻ですね。
エネルギーも相当量使うと思われます。
ジャンプする理由は諸説ありますが、
・体についた寄生虫を落とす為
・メスにアピールする為(ジャンプするのはオスだけ)
などと言われています。
マンタはかつて、ツノのような頭鰭、巨大なコウモリのような体形から、
「デビル・フィッシュ」という名で怪物扱いされ恐れられました。
その後1970年代、
ダイバー達がマンタは温厚な生物ということに気づき、
今日では「ダイバーの憧れ」とされる存在になっています。
以上、マンタのお話でした。
進化論のきっかけになったカメ - ガラパゴスゾウガメ
関東では桜も散り、段々夏っぽい気候になってきましたね!
さて、今回は「ガラパゴスゾウガメ」についてご紹介します。
ガラパゴスゾウガメは、ガラパゴス諸島固有の種で、 世界最大のリクガメです。
なんと最大甲長は130cm、体重は最大のもので400kgほどになると言われています。
ゾウガメ種は脊椎動物の中で最も寿命が長いと言われ、
平均寿命は100歳を超えるほどです。
飼育下で175歳まで生きたという記録があります。
ガラパゴスゾウガメの身体能力についてご紹介しましょう。
歩く速度についてはカメの中で一番速く、時速3.3kmで歩くそうです。
ちなみにこの速さはゴキブリと同じ速さとのことです笑
次に、オスは交尾の際、「唸り声」を上げます。
そもそもカメは声を出すための器官である声帯を持っていない為、
基本的に「鳴く」という行動ができません。
では、ガラパゴスゾウガメの唸り声の正体は?
これは呼吸の際に起こる空気の摩擦で起こるそうです。
そして今回のタイトルにもあるテーマについてですが、
ガラパゴスゾウガメは、ダーウィンの進化論の発表に影響を与えた生物です。
ダーウィンは32歳の時、ガラパゴス諸島に探検の旅に出ました。
ガラパゴス諸島でダーウィンは今まで見たことのない様々な生物に出会い、
その中でも進化論に大きな影響を与えた生物が2種いましたが、
そのうちの1種がこのガラパゴスゾウガメでした。
ガラパゴスゾウガメの何が特徴的だったかというと、
このゾウガメが生息している島によって、甲羅の前縁の形が違いました。
草がたくさん生えている島に生息している場合は最初の写真のような通常の形(ドーム型)になっており、
草があまりなくて低木やサボテンを食べる必要がある島では、前縁が深くえぐれた形(くら型)になっていました。
これは生物が環境に応じて自らの形を変えていったことを示していました。
元々違う形のカメが外部から流入する可能性もありますが、
カメは空を飛べない為、カメが外部から複数回に渡って島に流入したとは考えにくいことでした。
当時は生物が形を変化させる(進化する)という常識はなかったので、衝撃的な発見だったと思われます。
最後に、ガラパゴスゾウガメは、
成体になると野生では天敵がいない種と言われていますが、
人間による捕獲(食用)や、人間が島に連れ込んだペットや家畜による、
卵の略奪、生息環境の破壊により絶滅危機に瀕しました。。。
今は保護により2万頭程度まで回復したようです。
さて、私はGWに沖縄に行ってまいります!
ということで次回は沖縄で見つけた生物をご紹介したいと思います!
ではまた!
幸運を呼ぶ虫 - ナナホシテントウ
先週、ナナホシテントウを見つけました。
ようやく虫が見られる季節になりましたね。
テントウムシといえば、鮮やかな赤い色が特徴ですよね!
この赤い色は警告色を示していると言われています。
テントウムシを触ると黄色の臭いを放つ体液を出します。
この体液には「アルカノイド」という毒性の成分が含まれており、
鳥はこの成分を嫌います。
その為テントウムシは鳥に食べられることはほとんどありません。
こんな特徴を持つテントウムシですが、
ご存知の方も多いと思いますがテントウムシは漢字で「天道虫」と書きます。
テントウムシは太陽=「お天道様」に向かって、上へと登っていく習性があり、
この習性から「天道虫」と名付けられたということです。
なお、太陽には「太陽神(天照大神)」がいると考えられており、
その太陽神の元へ行くための天の道を教えてくれる虫と言われていて、神聖な扱いをされている虫です。
また、テントウムシは欧米でも神聖な虫として扱われています。
英名ではテントウムシを「Lady bird」と呼びますが、
欧米では「Lady」は 聖母マリアを表しており、テントウムシは「聖母マリアの化身」と言われるのです。
その為、例えばアメリカではテントウムシを殺すのは不吉なこととされます。
その他にも、テントウムシは多く「幸運を呼ぶ虫」というモチーフとなっています。
テントウムシは人間にとって益虫です。
これらは農業を営む人間が害虫とみなしているので、それらの害虫を食べてくれるテントウムシは大切な存在です。
このように人間にとってありがたい存在だった為、
各地で良いイメージの虫として定着したのではないでしょうか。
砂漠の船 - ラクダ
今回は「砂漠の船」と呼ばれる動物、ラクダについて紹介したいと思います。
インド西部、西アジア、北アフリカ、オーストラリアと広く分布し、
全世界で1400万頭生息しているラクダのうち、90%がヒトコブラクダと言われています。(2010年時点)
ラクダ、といえば「コブ」が特徴の動物ですが、
これがどんな役割を果たしているか知っていますか?
みなさんご存知の通り、ラクダは主に砂漠など乾燥地帯に生息する動物ですが、
この砂漠生活に特化した、驚くべき能力をご紹介したいと思います。
ラクダのコブは大きく2つの役割を持っていると言われています。
1つ目の役割は栄養の貯蓄です。
砂漠は生物が生活しにくく、餌が少ない環境です。
ラクダはそれにコブという形で適応しました。
コブは主に脂肪からなり、食事が出来ない時はこの脂肪を栄養分として使うことができます。
その為、ラクダの栄養状態が良い時はコブが大きくなりますが、食べ物を食べない時間が長くなると段々と小さくなっていくのです!
2つ目は断熱材としての役割です。
砂漠は非常に強い陽が照りつける場所です。
汗をかかないラクダにとって、そのままでは体温が上昇し続けてしまいます。
そこで、背中に脂肪をコブとして背中1箇所に集中させました。
そうすることで日光による熱をコブで受け止めて遮るようにしたのです!
他にもラクダは砂漠生活に適応した能力をいくつも持っています。
・二列になった長いまつげ&鼻の穴も自由に閉じることができる
→砂漠に舞う砂やホコリを防ぐ
・長い体毛
→照りつける日光や夜の寒さを防ぐ
・ひざや胸に「たこ」がある
→固い地面に座るのに適している
・足の裏に角質化したこぶがある
→温度の上がった砂地を歩くのに適している(夏の海の熱い砂浜を歩いたことはありませんか?)
・赤血球が細長い形をしている
→体の水分が少なくなった時にも血管がつまりにくい形
・1回に60〜100リットルもの水を飲むことができる
→体に水分を蓄えることができる
・体温を34度〜42度まで変化させることができる
→外気温が高い時は体温を上げて水分の減少を防ぎ、低い時はエネルギー消費を抑える
と、このように様々な機能を持っています。
まさに砂漠生活に特化した動物なのです。
人との関わりといったところでは、特に乾燥地域での乗用利用です。
ラクダは、砂漠の隊商「キャラバン」の主役として数世紀に渡って利用されてきました。
最大300kgもの荷物を背負って移動できるそうです。
ところで、ラクダに乗ることに慣れていない人はしばしば「ラクダ酔い」するそうです。
これにはラクダの歩き方「側対歩」というものが関係しています。
側対歩とは、右前肢と右後肢、左前肢と左後肢がペアになって離陸、着地する歩き方です。
これに対して、私たち人間の歩き方は「斜対歩」と呼ばれます。
側対歩では左右のぶれが大きくなります。(これがラクダ酔いの原因です)
歩幅も稼げないのでスピードが出ませんが、その代わりにからだのひねりを使うことがなく、非常にエネルギー効率が良いのです。
ゾウ、キリンなど比較的大型動物がこの歩き方をすることが多いようです。
余談ですが、以上から江戸時代の日本人の「なんば歩き」は省エネな歩き方だと考えられます。
最後に、ラクダのミルクは牛乳よりもヘルシーで、高級なミルクとして販売されているようです。
牛に乳よりもしょっぱい感じらしいですが、チャンスがあれば試飲してみたらいかがでしょうか?
<春の鳥> 梅に集まる鳥は? - メジロ
桜も開花しました!
今週末は花見にちょうど良さそうですね!
ということで、「春」にちなんだ動物を紹介したいと思います。
タイトルにある質問ですが、
春に見られる花「梅」に集まる鳥と言えばどんな鳥を想像しますか?
写真の木は河津桜ですが、この鳥の姿をイメージした方もいるのではないでしょうか?
この鳥はウグ・・・
ではなく、メジロです。
目の部分が白い輪になっているのが特徴です。(メジロ=目白)
英語でも、 "White-eye" と、この特徴から命名されているんですね。
この鳥は、ウグイスとよく間違われます。
ことわざで「梅に鶯」(=調和が取れている様を表す言葉)があるので、
梅→鶯と連想してしまいますが、ウグイスは梅の蜜を吸わないので、
実際に梅の木に集まるのはメジロであることが多く、混同される所以のようです。
また「うぐいす色」についても、
メジロの色に近い緑色が連想されることが多いと思いますが、本物のウグイスの色は灰褐色です。
さて、このメジロですが少し悲しい話もあります。
メジロは非常に美しい鳴き声を持つ鳥でもあります。
そのような鳴き声を持つ為、「鳴き合わせ会」と呼ばれる、メジロの鳴き声を競い合うコンテストというものが行われています。
その勝負結果によって鳥には「横綱」「大関」といったランクがつけられ賞金が出ます。
鳴き合わせ会でランクの高い鳥は高額で売買されることがあります。
売買は闇市場で行われることもあり、ここで取引されるメジロは密漁によるものも多いようです。(鳴き合わせ会自体は違法ではありません)
現在は取り締まりも厳しくなり、特別な許可がない限り捕獲及び飼育は禁止されています。
最後に、メジロは和歌山県、大分県の「県鳥」に指定されています。
大分には、「めじろん」という2008年のおおいた国体のマスコットキャラクターがいます。
このめじろんですが、国体終了後は、大分県応援団"鳥"となっているようです。
以上、花見に行く際はこのメジロについても観察してみてはいかがでしょうか。